フランス領モロッコの酒場をある日一組の夫婦が訪れる。酒場の店主リックは女を見て驚く。陥落前のパリでかつて愛し合い、今は忘れようとしていた女だったからである。パリ陥落の日、一緒にパリを出ようとしたが女は約束の場所に来なかった。
 今になってなぜ自分の前に現れたのか・・・クールを装っていたリックは彼女の出現に荒れる。パリを一緒に出なかった理由を話しにきたイルサに対して、リックはかたくなな態度をとり理由を聞こうとしない。
 イルサはリックが持っているかもしれない特別な旅券を手に入れるため、酒を飲んであれているリックの元へやってくる。かばんの中にピストルをしのばせて・・・
 旅券を出せとせまるイルサ、欲しければ俺を撃てというリック・・・イルサはリックに銃を向けるが引き金を引くことができない。今でも深くリックを愛していることに気づくのである。
 再び互いの愛を確認しあう二人。(今ならさしずめベットシーンになるのだろうが、そこはそれ作られた時代が違うのでキスシーンどまりであるが、バーグマンのキスシーンの上手さには定評がある。)
 そして、感動のラストシーン。自分の思いを殺してイルサとその夫を送り出すリック。「俺たちにはパリの思い出がある」という超きざなせりふもボギーの口から出ると、かっこいい!
 イングリッド・バーグマンの自伝を読んだら、「カサブランカ」では脚本が二転三転し、最後までリック(ハンフリー・ボガード)を愛しているのか、ラズロ(だんな)を愛しているのかわかりかねて、役作りがやりにくい映画だったと回想していた。
 バーグマンの悩みはいざ知らず、泣かせる映画であった。バーグマンが美しかったこと・・・そしてあの音楽。ボガードのきざなせりふもきまっていた。我が家ではしらばっくれる時によくこのボギーのせりふを使う。「そんな昔のことは忘れた・・・」ボガードは口をあけずにしゃべるので、もごもごして何を言ってるかよくわからないのだが・・・
 難民の若夫婦がルーレットで一山当てようとしてリックの店にやってくる。冷たい男を装いながらリックはこの若夫婦を救ってやる。自分の店の儲けをふいにして。
 映画の見せ場の一つにリックの店でフランス国家をみんなが歌うシーンがある。ドイツの将校たちが我が物顔に振舞い、ドイツ国家を歌っている時にラズロが楽団に近づいていき、フランス国家を演奏するように言う。楽団の人たちがリックをチラッと見ると、リックは黙ってうなずく。おもむろにフランス国家が演奏され、居合わせた人々はここぞとばかりに声を張り上げて高らかにうたう。ある者は泣きながら、ある者は頬を高潮させて・・・
 私にはこんなにも誇らしく「君が代」を歌った経験はない。国の存亡にかかわるとき国歌は一つのよりどころになるものなのだろう。
 この映画ですっかりバーグマンにはまってしまい、「ガス燈」「ジャンヌ・ダルク」「誰がために鐘は鳴る」など見まくった。
 若いとき美人だった人が老いていくのを見るのはファンとしてつらいものがある。ロシアの皇女アナスターシャを演じた「追想」は好きだったけど、(ユル・ブリンナーがかっこよかった)サガン原作の「ブラームスはお好き」(だったと思うが違ったかな)や「サボテンの花」などはどこか痛々しい感じであった。特に、「ブラームス・・・」で、アンソニーパーキンスに向かって「もう私は若くないのよ!」と叫ぶシーンが妙に耳に残ってしまった。
 「オリエント急行殺人事件」や「秋のソナタ」などになると、もうおばあちゃんと言った感じなので、それなりに安心して見ていられたけれど。
 しかし、バーグマンのあの濡れたような瞳・・・英語ではボガードは「きみの瞳に乾杯」とは言ってないそうだが、上手く訳したものだと思う。
カサブランカ
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